この事例の依頼主
50代 女性
被害者は、道路脇を歩行中、背後から進行してきた自動車に衝突されました。この事故によって、被害者は、脳挫傷、外傷性くも膜下出血などの重大な傷害を負いました。そして、高次脳機能障害、四肢の運動失調、膀胱直腸障害などの重篤な後遺障害が残り、常に介護が必要な状態になってしまいました。
【後遺障害等級】この事案では、まず、後遺障害等級の認定結果に問題がありました。高次脳機能障害、四肢の運動失調、膀胱直腸障害などの重篤な後遺障害が残っていたにもかかわらず、別表第一第2級1号という認定になっていたのです。受任後、被害者の状態を詳細に把握した上で、認定結果を検討したところ、被害者の状態が正しく評価されていないと考えました。そこで、被害者の状態を裏付ける資料を収集した上で、異議申立を行い、別表第一第1級1号の認定を得ることができました。【訴訟】別表第一第1級1号の認定を得られた後、訴訟を提起しました。訴訟における争点は、多岐にわたっていましたが、主な争点の認定は、以下のとおりでした。1 将来介護費高次脳機能障害、四肢の運動失調などの重篤な後遺障害が残ったため、被害者は、日常生活において自分でできることはほぼなく、日常生活のあらゆることに見守り・声かけ・介助が必要な状態でした。配偶者は、就労していたため、全ての介護を担うことは不可能でした。また、近親者だけで全ての介護を担おうとすれば、近親者に過度の負担が集中し、短期間で介護を継続できなくなる危険がありました。このため、日中は、介護施設に通所したり、訪問介護サービスを利用するなどして、介護の負担を軽減するための介護スケジュールを組んでいました。介護サービスを利用するために必要な費用の水準について、将来的に低額化する可能性はなく、むしろ高額化する可能性があることを強調し、少なくとも現状を維持することは確実であると強く主張しました。この結果、裁判所は、職業介護人の介護費について、月額102万8506円(1日あたり3万3812円)という高額な費用を認定しました。これ以外にも、近親者の介護費用として、1日3000円を認定しました。2 自宅改造費被害者は、四肢の運動失調のため、歩行ができなくなっており、車いすで移動していました。しかし、被害者の自宅は傾斜地にあったため、玄関にたどり着くまでに階段を上がる必要がありました。車いすでは階段を上がることは不可能だったため、ホームエレベーターを設置し、安全に自宅内に入れるように改造する必要がありました。また、自宅内も、トイレ・風呂・寝室を障害者用の設備に変更したり、被害者が移動する範囲をバリアフリー化する必要がありました。訴訟では、これらの工事に要した工事代金の賠償を求めました。加害者(保険会社)は、改造によって近親者も利便性が向上するという利益を受けているから、工事代金の全額の賠償を認めるべきではないと主張して争ってきました。しかし、改造のプランは、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーの助言などに基づいて作成されたものでした。また、障害者の状態に合わせた改造は、健常者にとっては使いにくい点も多いため、利便性が向上したという事実はないことを主張しました。これらのことを詳しく主張・立証した結果、工事代金の全額(約1000万円)を損害として認めてもらうことができました。3 基礎収入逸失利益の計算において、定年退職が予定される年齢以降の基礎収入について、いかなる金額を認定するかが争いになりました。こちらは、被害者の経歴、資格の取得状況などから、被害者は就労について高い意欲・能力を持ち、定年退職後も十分な収入を得る蓋然性があると主張・立証しました。この結果、裁判所は、被害者の基礎収入について、女性大卒65歳以上の平均賃金(約541万円)とすべきと認定されました。
既に述べたように、この事案では、当初に認定された後遺障害等級に問題がありました。訴訟において後遺障害等級の変更を認めてもらうことは難しいです。このため、訴訟を提起する前に、できる限りの対応をして、被害者の状態を「適切に評価」した後遺障害等級を認定してもらっておくことが重要です。この事案でも、被害者の症状を裏付ける資料をできる限り入手した上で、異議申立書において、資料をどの様に評価すべきかを詳しく説明しました。この結果、被害者の状態を適切に評価した後遺障害等級を認定してもらうことができました。その後、訴訟を提起し、裁判が始まりました。裁判では、争点に対して、詳細に主張立証を行いました。それに加えて、裁判の期日には必ず出席して、裁判官の認識を把握したり、議論するように努めました。解決に至るまでに長い期間がかかりましたが、最終的に、納得のできる解決を得ることができました。近親者は、介護や仕事で大変な状況にありながらも、資料の収集や状況の説明などで多大な努力を続けていました。この頑張りも、よい解決を得るために重要だったと思います。詳しくはこちらのページをご確認ください。https://daichi-lo.com/case/case-kouji1.html