この事例の依頼主
40代 女性
韓国人のAさんは,一人で韓国小料理店を経営していましたが,ある朝自転車で走行中に自動車に追突され,転倒して全治2週間の右肩,右肘,右膝打撲,挫創の傷害を負いました。外傷としては軽傷でしたが,右腕に激痛が生じて右腕が動かせなくなり,料理を作ることが不可能になりました。Aさんは,店を閉店するわけにもいかないので,韓国人で料理のできるBさんら5人のお友達にお願いし,交代で日給1万円で店の従業員(料理人)として働いて貰うことにしました。Aさんは,1ヶ月ほど整形外科クリニックに通院しましたが,右腕の痛みがとれず不自由な状態が続いたので整骨院に転院し,以後整骨院を4ヶ所転々としました(合計5ヶ所)。Aさんは,加害者の加入している保険会社に治療費,休業補償(Bさんら5人に支払った給料)の支払いを請求しましたが,保険会社は,整形外科クリニックの治療費を支払ったのみで,それ以外の支払いを拒否し,Aさんとの交渉を打ち切って顧問弁護士処理案件としてしまいました。
相談を受けた野口敏郎法律事務所の野口は,先ず保険会社の顧問弁護士と交渉しましたが,全く埒が明かなかったので,加害者を被告として損害賠償請求訴訟を提起しました。加害者の代理人となったのは,当然のことながなら保険会社の顧問弁護士でした。野口は,休業補償,整骨院の治療費のみならず,慰謝料,弁護士費用を加えて請求しましたが,保険会社の顧問弁護士は激しく争いました。野口は,整骨院やBさんら5人に協力を求め,診断書,陳述書等を作成して貰うなどして裁判所に提出するとともに,保険会社が支払いを拒否するのは外国人に対する偏見と差別によるものであることを強く主張したところ,裁判所から和解勧告があり,保険会社は,整骨院の治療費6ヶ月分と休業補償5ヶ月分の支払いを認めました。
保険会社の主張は,①本件は全治2週間程度の軽傷であって,当初の整形外科クリニックの治療費以外は事故との因果関係がない,②従業員への給料支払いは,経営判断の問題であって,休業損害と同一視できない,というものでしたが,当職が鋭意主張・立証したことにより,裁判所は,Aさんの主張を概ね認めた和解勧告を出してくれました。保険会社は,何か疑問を抱くと保険金の支払いを拒否しがちであり,本件も保険会社に疑問を抱かせるようなケースであったと言えますが,保険会社の回答に納得できない場合は,たやすく諦めないで弁護士に相談することをお勧めします。