犯罪・刑事事件の解決事例
#医療過誤

入院して胆管炎治療のための手術を受けた患者が、術後急性膵炎となり、翌日朝亡くなられた事案

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安倍 久美子 弁護士が解決
所属事務所九州合同法律事務所
所在地福岡県 福岡市東区

この事例の依頼主

年齢・性別 非公開

相談前の状況

母親が総胆管結節性胆管炎の治療のため入院し、まずLAPC(腹腔鏡下胆嚢摘出術)を受け、数日後にEST(内視鏡的乳頭切開術)及びERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)による採石術(胆石を取る手術)を受けたが、その翌日朝に心肺停止となり亡くなった、として、娘さんが相談に来られました。父親も同様の手術を受けたことがあり、その時は特に問題なく退院したので、手術を勧めたことを後悔しておられるとのことでした。手術当日の夜2回嘔吐があり、心配したが、問題ないとのことだったのに、翌朝亡くなってしまった。カルテを見ると急性膵炎になるリスクが高く、死亡する危険性があることは説明したと書いてあり、事前にそのような説明は受けておらず納得がいかないとのことでした。

解決への流れ

カルテを調査し、医師に面談したところ、手術当日の夕方アミラーゼ(膵臓の酵素)の数値上昇があり、医師は急性膵炎と判断しているにもかかわらず、術前に準備したひととおりの膵炎予防の治療のほかは、何ら追加の治療をおこなうことなく、病院を退出していました。また、翌日朝になるまで血液検査もおこなわれていませんでした。医師が退出する前の血液検査の結果からすれば重症度はいまだ低いと考えられたため、急性膵炎診療ガイドラインに沿った治療・管理がおこなわれていれば患者が死亡することはなかったとして、訴訟外で損害賠償請求を行ったところ、病院が責任を認める形で和解ができました。

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安倍 久美子 弁護士からのコメント

EST、ERCPという手術は、術後に急性膵炎を起こすことがあることが知られています。急性膵炎は、重症化すると命にかかわるため、常に重症化を念頭において、全身的な集中管理と治療を実施すべきとされています。相手方病院の治療と経過観察は、残念ながらガイドラインに照らして十分なものとはいえませんでしたので、その点を丁寧に指摘していったところ、病院が責任を認める形での和解を勝ち取ることができました。なお、娘さんは関東在住で、関東の患者側代理人の弁護団より当事務所を紹介いただき、相談となりました。