犯罪・刑事事件の解決事例
#削除請求

ウェブサイト管理者からの意見照会に対応した事例

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荒生 祐樹 弁護士が解決
所属事務所さいたまシティ法律事務所
所在地埼玉県 さいたま市浦和区

この事例の依頼主

40代 男性

相談前の状況

ブログに,ある著名人の考え方について批判的なコメントを寄せたところ,ブログのカスタマーサービス(以下,「ウェブサイト管理者」といいます。)から,「あなたのブログ記事により名誉,プライバシーが侵害されたと主張される方から,貴方の発信者情報の開示請求を受けた」との連絡があった。そして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)第4条第2項に基づき,本照会受領日から2週間以内に,ウェブサイト管理者が開示に応じることにつき,意見の照会を行う旨の連絡があった。

解決への流れ

対象となった「批判的なコメント」を確認したが,法的観点からすれば特に権利侵害する内容とは認められなかった,ウェブサイト管理者が開示に応じることには反対であることと,理由をきちんと記載して返信することの助言を行った。そうしたところ,数日経ってから相談者に対し,ウェブサイト管理者から,「協議の結果,開示しないこととする」との連絡があった。

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荒生 祐樹 弁護士からのコメント

ウェブサイト管理者及びプロバイダは,発信者情報の開示の請求を受けたときは,侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除いて,開示するかどうかについて,当該発信者の意見を聴かなければならないものとされています(プロバイダ責任制限法2条)。いわゆる「意見照会」という手続きですが,この手続きは法的義務とされています。したがって,投稿した内容がどういった内容であるにせよ,書かれた側が権利侵害であると訴え,開示請求を行えば,プロバイダ側は意見照会を行わなければなりません(ログを保有していない場合を除く)。こういった仕組みを最初から知っていれば,「意見照会は必要な手続きだから」ということで特段恐れるようなことでもないのですが,このあたりの仕組みを知らない方からすると,ある日突然意見照会なるものが届いて,2週間以内に意見を述べなければならない,というのは大変な驚きであるとともに,自分の氏名や住所が開示されてしまうかもしれないという,強いストレスを感じてしまう方も少なくありません。相談者のケースでは,そもそも投稿内容が権利侵害であるとは考えにくかったため,開示には応じないこと,その理由を記載してメールするように助言し,結果として開示には至りませんでした。もっとも,今後仮処分による発信者情報開示請求や,警察の捜査によりログの差押えがされる可能性は否定できませんが,ウェブサイト管理者からの意見照会を過度に恐れず,冷静に対応することがポイントとなったケースでした。