この事例の依頼主
20代 女性
出産時に重度脳性麻痺が残ってしまったケースについて、ご両親から損害を請求できないか相談を受けたケースです。公的な助成制度(産科医療補償制度)の対象とはなっていましたが、産科医療補償制度が必ずしも病院の法的責任を前提にするものではないため、補償額は3000万円が上限になってしまいます。3000万円を超える部分については、別途被害者が病院に対して請求できる余地はありますが、産科医療補償制度の対象となったケースすべてにおいて、病院の過失が認められるわけではありません。そこでご両親から相談を受けて受任した後、まずは調査から着手しました。カルテを分析すると、夜中に2時間分娩監視装置を外していた時間帯があったほか、子宮口が5cmのまま分娩の進行がみられなかった時点においても、帝王切開の準備がなされていませんでした。さらに朝になり10分もの高度遷延一過性除脈が出現し、子宮口は7cmだったにもかかわらず、引き続き経過観察として急速遂娩を行わったという問題点があることが判明しました。そこで、分娩を扱う医療機関としては、胎児の心音や子宮収縮の状態を的確に把握するために、十分な分娩監視を行うべき注意義務があると考えられますが、かかる注意義務違反があるとして損害賠償請求の示談交渉を行うことになりました。
そこで第三者の専門医の意見も聴取して参考にした上、病院に対して損害賠償請求しました。病院は過失(注意義務違反)を認めて、示談段階では産科医療補償制度の補償金(3000万円)を含んで金9000万円という提案をしてきました。しかしながらご両親と打ち合わせて、重度脳性麻痺の損害を填補するには不十分な金額と判断して、後遺症慰謝料、後遺症逸失利益、付添介護費、車両購入費、医療器具等購入費、両親固有の慰謝料など金1億5000万円の損害額を求めて提訴しました。訴訟では過失(注意義務違反)の重大性を強調するとともに、両親の生活状況・必要な損害額について、写真・ビデオを用意するほか陳述書にも力を注ぐなど、詳細な損害立証を行いました。その結果、裁判所からほぼ請求額に近い1億4500万円の和解案が提示されて、和解が成立したものです。若いご夫婦は大変苦しまれていましたが裁判にも毎回出頭して裁判官にも児の様子を見てもらうなどして満足のいく解決に至ったものです。
医療過誤・医療ミスは、「医療調査」「示談交渉」「裁判」という3つの解決ステージがあります。私が弁護士登録した20数年前は、医療過誤事件を取り扱う弁護士は限られていました。そこで第三者の協力医とのネットワークを構築して、今では電話やメールですぐに相談できる体制を築いています。現在では公的な機関などから紹介も含めて年間100件を越える相談を受けています。患者や家族が納得できない治療に遭遇した時、一緒に寄り添いながら問題解決に当たってきましたので、まずは遠慮なくご相談頂けたらと思います。その他医療専用のサイトも用意しており、そこに他の解決例の一部を掲載しております。http://iryou.lawyer-koga.jp/