この事例の依頼主
50代 男性
私は、長男が小学校低学年の時に、妻であるA子と協議離婚しました。その後、長男が中学生になった時、私はもう一度A子とやり直すことにし、再婚しました。A子との再婚後、長女も生まれ、私は幸せをかみしめながら、平穏に過ごしていました。ところが、長男が高校生になったころ、A子が職場のCという男性と不倫をしていることがわかりました。しかも、Cとの不倫は、A子が私と離婚する前から続いていたことも、わかりました。不倫がばれたA子は、子供達を置いて出て行ってしまい、私は長年にわたって裏切られていたショックで、ひどく体調を崩してしまいました。私は、弁護士に依頼し、まずCから、不貞慰謝料の支払を受けました。その後、私はA子と離婚することにし、A子から長女の養育費や、過去の婚姻費用の一部の支払を受けることのほか、A子が私との最初の離婚後も、私の姓である「B山」を利用し、Cとの交際において、なじみの宿泊施設等の優待を受けていた事実があったため、二度とB山姓を使用しないこと、また、離婚後の本籍地を、B山一族とは無関係の土地に定めることを条件として、離婚しました。ところが、離婚の事実が記載された戸籍を取ったところ、A子がいまだ「B山A子」として記載されていることが判明したので、驚いて弁護士に相談しました。
弁護士に調べてもらったところ、A子は、私と一度目に離婚した際、自分の実家である「C田」家の戸籍には入らず、私の姓である「B山」で、本籍地もB山一族の出身地のまま、自分のみの戸籍を作っていたため、二度目の離婚によっても当然には旧姓には戻らず、B山のままであったことがわかりました。しかし、このままでは、離婚条件の一つである、「B山」姓を使用しないという取り決めに反することから、弁護士を通じてA子と交渉してもらい、最終的には、無事A子が旧姓に戻ったことを確認しました。
現在の日本の民法では、夫婦は同一の姓を名乗ることとされており、妻が夫の姓を名乗るパターンが大多数です。そして、夫婦が離婚した場合、相手方配偶者の姓になっていた人は、自動的に旧姓に戻りますが、子供と姓が別になる(子供が相手方配偶者の戸籍に残る場合)ことで、学校関係の用事などに支障が出ると感じる方もいらっしゃいます。そのような方は、離婚成立から3か月以内に役所に届け出れば、婚姻時の姓を名乗り続けることができます(婚氏続称といいます)。このような人が、その後再婚して再婚相手の姓を名乗るようになった後、離婚した場合は、もともとの旧姓に戻るのではなく、最初の離婚時に名乗ることを希望した、最初の配偶者の姓に戻ることになりますので、注意が必要です。本件のA子さんは、相談者との結婚により、相談者の姓である「B山」を名乗っていましたが、ご長男が小学校低学年の時に一度離婚しました。しかし、その時点で、A子さんは実家の旧姓には戻さず、続称届を提出して、「B山」を名乗ることを選択しました。その後、A子さんはまた相談者と再婚し、引き続き「B山A子」として生活したあと、再び相談者と離婚しましたので、旧姓には戻らず、最初の離婚時に名乗った「B山」のままだったというわけです。これをさらに旧姓に戻すには、A子さんが、家庭裁判所に、「氏の変更許可審判」を申し立てる必要があります。そこで、私はA子さんの弁護士に連絡を取って事情を説明し、A子さんに当該審判の申立てをしてもらいました。A子さんはすぐ対応してくれ、約2ヵ月後には、旧姓に戻ったことを示す戸籍の写しを送ってくれましたので、相談者もようやく安心することができました。