犯罪・刑事事件の解決事例
#慰謝料

納得しがたい内容での調停を拒んだ後、訴訟外で和解した事例

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関 範子 弁護士が解決
所属事務所やよい共同法律事務所
所在地東京都 港区

この事例の依頼主

30代 女性

相談前の状況

私は、ある日勤務先で一人で作業をしていたところ、先輩であるA氏に強姦されました。私は、突然のことでショックが大きすぎたため、すぐに警察に届けることもできず、A氏を無視することでやり過ごそうとしました。しかし、A氏は、私がA氏を受け入れたと誤解したのか、その日以後、私が怖くて声も出せないのを良いことに、私の体を触ったり、ホテルに呼び出して姦淫する等のことを繰り返すようになりました。私は、性的な嫌がらせを受けながらも、まるで自分が夢の中にいるようで、誰かに話すとか、警察に行くと言うことがどうしてもできず、ただ、自分は存在する価値のない人間だと思うようになりました。そのうち、私はうつ状態になり、過呼吸や不眠、食欲不振等、様々な症状に悩まされ、リストカットをするようになり、通院治療を受けるようになりました。その後、私は退職し、A氏の嫌がらせもそこで終わりましたが、A氏と毎日顔を合わせることがなくなったことで、やはりA氏には自分のしたことの責任をきちんと取ってもらいたいと徐々に思うようになりました。そこで、退職してから3年近く経ってからですが、私は意を決してA氏に連絡を取り、私にした性的暴行の数々について謝罪して欲しいと申し入れました。A氏は、当初、話をはぐらかそうとしていましたが、話しているうちに、私にしたことを認め、すまなかったと謝りました。そして、慰謝料を支払うことも考えている等と述べました。私はその会話を録音しましたが、その後、A氏はのらりくらりとした態度を取り、慰謝料支払いについては話が中断してしまいました。そこで、私は、裁判所に、1000万円の損害賠償を請求する民事調停を申し立てました。ところが、第一回目の調停期日で、私は裁判官や調停委員から、寄ってたかって、「どうして警察に被害届を出していないのか」「どうして何度もA氏と性交渉があるのか」「最後に被害に遭ってから3年近くたってからこんな調停を申し立てたのはどうしてか」「A氏なんかにかかわっていないで、今の生活に集中したらどうか」などと言われ、調停を取り下げるよう説得を受けました。私は、A氏が非を認め、慰謝料を払うと言っている録音があるのに、どうして取下げをしないといけないのか意味がわかりませんでした。他方、A氏は、30万円くらいなら解決金として支払うと言っている、とのことで、裁判官は、「取り下げないなら、30万円もらって終わらせるということで良いでしょう」等と言ってきました。しかし、治療にかかった費用や、長期にわたり心身に受けた苦痛を思うと、30万円などで和解できるはずがありません。私は、そんな額では応じられないと言いましたが、裁判官は無情にも、A氏が私に30万円を支払うべきという内容の、調停に代わる決定を出しました。私は、この先どうすれば良いのかわからなくなり、弁護士に相談しました。

解決への流れ

弁護士によると、「調停に代わる決定」は、そのままにしておくと告知から2週間で確定してしまうとのことでしたので、これに対して異議を申し立て、決定の効力を失わせてもらいました。そして、改めて、私を原告、A氏を被告として、300万円の慰謝料請求訴訟を提起してもらいました。訴状では、A氏からされた性的暴行について、時系列に主張し、私の医療費の領収書や、A氏が強姦を認め、慰謝料を払うと言った録音の反訳などを証拠として提出してもらいました。そうしたところ、第1回口頭弁論期日前に、A氏から弁護士に対し、訴訟によらずに、速やかに和解したいとの申し入れがありました。A氏は、私が自分で申し立てた調停の時には、「30万円くらいなら支払う」と言っていましたが、弁護士との話し合いでは、200万円を支払うことに同意しました。そのため、私はこれを公正証書の形にしてA氏と和解することにし、訴訟の方は取り下げました。A氏から初めて性的暴行を受けた日以来、私は闇の中を歩いているような日々を過ごしてきました。今も、まだ体調が完全に戻ったわけではありません。私の気持ちを少しでも理解してもらえるかと期待した調停で心無い言葉を投げつけられ、あきらめるしかないのかと思っていましたが、弁護士に相談したことで、結果的に、A氏の改めての謝罪と、相応額の慰謝料支払の約束を取りつけることができ、ようやく気持ちに一区切りをつけることができました。

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関 範子 弁護士からのコメント

調停は、弁護士をつけずに申し立てることができ、実際、ご自分で書面を作って申し立てる方は結構いらっしゃいます。しかし、残念なことですが、事案によっては、弁護士をつけずに申し立てると、自分の思っていない方向に誘導されそうになったり、ひたすらあきらめるよう説得されたり、という事態が起きることがあります。特に、離婚や、男女問題で調停を申し立てたところ、調停委員から、自分が納得できないような内容の条件で合意することを強く迫られ、びっくりして弁護士(私)のところに相談に来られる方が結構いらっしゃいます。そういう方の代理人になって、次の期日に一緒に裁判所に行くと、調停委員の態度が前回と全く変わって、さらに驚いた、という経験をされる方が多くいらっしゃいます。本件の相談者は、性的暴行の加害者であるA氏が事実を認め、慰謝料を支払うと述べている音声の録音を証拠として有していましたが、自分で申し立てた調停では、頭ごなしに、あきらめるよう説得されてしまいました。恐らく、請求額が1000万円という、この種の事案における損賠賠償の額としては(裁判所から見て)高額な設定であったこと、相談者が一度も性的暴行について警察に被害届を出したり、職場の上司に訴えたりしていないこと、最初の性的暴行後も、A氏との関係に応じてしまっていること、A氏に責任を取ってもらいたいと連絡をしたのが、最後の性的暴行から3年近く経った時点であったこと等から、裁判所は、本当に相談者が一方的に「被害者」と言えるのか、疑いを持っていたのかも知れません。これらには、性的暴行の被害者によくみられる理由がちゃんとあったのですが、残念ながら、調停では裁判所にそれを理解してもらうことが難しかったようです。本件の相談者のようなケースでは、そもそも、調停をはさむ必要があるのか(いきなり訴訟提起でも良かったのではないか)、というところからの検討も必要だったと思いますし、確かに、相談者は最後の被害から3年近く経ってから、様々なアクションを起こしていますので、その理由についての説明や、性的暴行と心身の不調との関係についての説明等、説得的な書面を作成する必要があります。利益実現のために最適な方法を選び、最短距離で目的を達成するためにも、このような事件でお困りの方は、弁護士に相談されることを強くお勧め致します。相談の結果、自分で進めても大丈夫な案件なのか、そうでないかがわかるだけでも、その後の方針の立て方がずいぶん変わってきます。本件では、裁判官が出した「調停に代わる決定」に異議を申し立てて効力を失わせ、改めて損害賠償請求訴訟を提起したところ、相手方から和解の申し入れがあり、請求額に近い額で和解することができました。